南アフリカが抱えている課題【続き】
こんにちは。
前回の記事に付随して詳しく書いていきます。
南アフリカ最大の問題となっている失業率ですが、原因は教育制度だけではないようです。
南アフリカ統計局によるこのグラフによると、人種別で失業率に大きな差が出ていることがわかります。
黒人は平均を上回っていますが、それに対してアジア人、白人は大きく下回っています。
1994年に完全に廃止された人種差別の政策であるアパルトヘイト政策が20年以上たった今も糸を引いているようです。
アパルトヘイト時代には白人以外の人々は技能労働を中心とする一定の職種に就くことが禁じられており、人種分離教育制度の下、雇用に必要な訓練の機会が与えられませんでした。
南アフリカ政府による代表的な雇用創出への取り組みとして黒人の経済力強化を目的としたB-BBEE政策とEPWPが挙げられます。
・B-BBEE政策(borad-based black economic empowerment)
アパルトヘイト時代、黒人、カラード、女性などは、不当な差別によって、歴史的に不利な立場に置かれてきた。これを克服するためのアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)として位置付けられ、南アの特徴的な政策。
黒人の経済強化に対する貢献をポイント化し、貢献の大きい企業に対して公的事業の調達などの際に優遇するもので2003年に施行された。
黒人の経営参加に加えて雇用の増加、非雇用者の開発を促すことで黒人の経済状況の改善を意図したものである。
公的調達や事業の許認可などビジネス面でメリットが大きいことが企業にとってのインセンティブとなっている。
・EPWP(Expand Public Works Programme)
職業経験のない黒人の若者や女性に公的事業で一時的な雇用を与えるプログラムで失業者や非就業経験者に職業スキルや職務経験を獲得させること、労働所得を通じて将来の雇用のためのチャンスを高めてもらうことを目的としている。
南アフリカ政府によると、EPWP の第 1 フェーズ(2004~2009 年)で 160 万人
第 2 フェーズ(2009~2014 年)で約 407 万人の一時的な雇用機会を生んだとしており
第 3 フェーズ(2014~2019 年)では 600 万人の一時的な雇用機会を創出する見込みとなっている。
しかし、現状ではこれらの公的な雇用対策を行ったにもかかわらず、目に見える効果は出ていないようです。2007年の世界金融危機前は 5%を上回る経済成長により失業率は順調に低下していましたが、危機以降は景気減速から失業率は再び上昇してしまいました。
2014 年には雇用者数は危機前の水準まで戻りましたが、危機後の雇用の増加は公的セクターが多くを占めるサービスがほとんどで、民間部門の雇用を拡大することにつながっていません。
また、鉱業や 製造業などのセクターはむしろ減少しており、民間部門の雇用者数は危機前の水準まで戻っていないようです。 公的セクターの伸びによって雇用者数自体は増加しているものの、新規の労働人口流入を吸収するには不十分で、若年層を中心に黒人の雇用環境の劇的な改善にはつながっていません。
そのため黒人の若者の失業者は増え、貧困層に留まっており、所得格差も拡大したままとなっています。
雇用市場の停滞要因としては、、
供給サイド
・高スキル労働者の不足
・就業経験ない若年人口の増加
・アパルトヘイトの爪痕
・健康問題
・社会保障拡大による労働意欲の低下
需要サイドでは
・マイナスではないが低調な経済成長
・労働集約型から知識集約型の経済への移行
・低調な起業活動
などが挙げられます。
南アフリカ経済が低調である原因はアパルトヘイト時代に黒人の教育環境が劣悪だったことにあり、その後遺症として黒人の知識・技能が雇用者側の求める水準に達していないことが失業につながっています。
南アフリカの人口の8割を占めている黒人の失業率がこれだけ高いと国の経済にも大きな損失を与えることになります。
アパルトヘイトは、BRICSとして期待されつつも失速してしまった原因の一つだと言えるでしょう。
とはいえブラジルやロシアとは違ってマイナスには陥らず底堅い南アフリカは2013年にナイジェリアに抜かれるまではアフリカ最大の経済大国でした。
この失業率の高さでもアフリカトップレベルの経済大国なので、国全体でインフラが整備され雇用が創出できるようになると、中長期的視点から見て南アフリカはポテンシャルに富んでいると考えることができます。
経済失速の原因はこれ一つではないと思うのでいろんな角度から見ていきたいと思います。